【ネタバレ注意】『ジャングル大帝』の中の人間(1)ケンイチとメリー

ケンイチはアラビアのアデン(イエメンですな)におじで警察官のヒゲオヤジと暮らしていて、白人の子どもたちが通う学校に行っている。クラスメイトには、メリー、ピエール、アルベルトなどがいる(※このクラスメイト達が、後編のムーン山をめぐる壮大なストーリーにおいて、それぞれ重要なキャストになるとこがすごい)。ある日ケンイチは、難破船から逃れ偶然に浜辺に流れ着いたレオを、メリーたちの狩りごっこから救い出して、自分の家で保護することになった。

メリーはプロのハンター、ハム・エッグの娘で気が強く、弱いものを従わせたいという女王様願望が強い。父親が「月光石」調査隊(別に述べる)のガイドとして雇われたとき、「土人の女王になりたい」と一緒にアフリカに渡って「蛮族」にさらわれた挙句、ほんとうに「土人の女王」になってしまう(女王コンガ)。一方、調査隊に同行してメリーとはぐれたケンイチは、レオや動物たちとターザンのような生活をしつつ、その平和で豊かな川下の土地を狙う女王コンガ=メリーの部族と敵対する立場になっていく。

コンガは部族の人々や虜の動物たちをムチで支配するのだが、愛に飢えているというか、優しさに欠けている。ある日ついにケンイチと、行方不明のケンイチを探しに来たヒゲオヤジを捕らえ、川下への奇襲を敢行する。そのとき、突然ジャングルに寒波が押し寄せ雪が降る。空には不気味な高峰、幻の「ムーン山」の姿が浮かび上がる(これが次の大きなドラマの伏線)。留守集落ではケンイチとヒゲオヤジの機転で、火を焚き人々に温かい衣服を作らせ、コンガの集落は凍死を免れるが、コンガは民や虜のけものたちの反感を買い一瞬にして孤立する。

自棄になるコンガ=メリーに対し、ケンイチが「ぼくがこうしてここにいるのがわからないの?」と、一緒に日本へ帰ることを促す。

幼馴染ながら正反対の性格を持つ二人がこうして結ばれました…という一つのドラマだが、「ジャングルは動物たちのもの」「命は守るべき」「人にも動物にもそれぞれの幸福があるべき」という手塚治虫さんの思いが繰り返し響いてくるんだよなあ。