【ネタバレ注意】『ジャングル大帝』の中の人間(2)ヴィランズ

 ヴィランズだから悪役だ。手塚マンガの悪役たちは『ジャングル大帝』で出揃ったのでは?というくらい馴染みのキャラクターが出てくる。

 ハム・エッグ

 アセチレン・ランプ

 ダンディ・アダム

 あと悪役ってほどじゃないけどケンイチをライバル視している幼馴染のピエール

あれ?そうか、ロック(間久部緑郎)とスカンク草井は出てこないのか。彼らはもう少し後の時代のキャラなのかな。

ハム・エッグ(メリーの父親)はプロの狩猟家で、アフリカの野生動物を捕らえては荒稼ぎしていた。伝説の白いライオン・パンジャ(レオの父)を仕留めた代償に、原住民の酋長の頭飾りのダイヤを手に入れたハム・エッグは、また大儲けできるとほくそ笑む(パンジャの妻エライザはこのとき生け捕りにされ、ロンドンの動物園へ売られていく貨物船の中でレオを産んだ)。が、鑑定では「ダイヤではない。宝石の値打ちはない」。この石は地球の地殻変動エネルギーの謎を解くカギとなる「月光石」で、世界中の学者が注目していたものだった。ハム・エッグは「石を見つけたのは自分だ」と大ボラを吹いたために、学術調査隊のガイドとして再びアフリカへ行くはめになる。同行した一人娘のメリーは蛮族にさらわれ、自分も「片目のブブ」(獰猛なライオンでレオのライバル。あ、こいつもヴィランだ)に襲われ命を落とす。ニヤニヤ顔は超にくたらしいが、本編では娘の名を呼びながら絶命する悲劇の男。

アセチレン・ランプはブロードウェイの興行師(と名乗るが実はマフィアのボス)で、かつてアフリカで白いライオン・レオに出会ったことがある。ダンディ・アダムのサーカスで「しゃべるライオン」ルネに目をつける。ルネをめぐってアダムと大立ち回りの末、サーカスの象に踏みつぶされ死亡。いかにもプロの悪党らしいキャラ。

ダンディ・アダムはペテン師。他の手塚作品ではお見かけしたことないけど、どうなんでしょ。手下と密航中に偶然ルネと出会い、「しゃべるライオン」ルネを商売道具として大儲けをたくらむ。本編では、彼こそが最もずる賢く、冷酷なヴィランではないかしら。月光石を奪うために殺人も犯すし、ルネをアイドルとして売り出し徹底的に搾取する。最後はアセチレン・ランプとの争いの末死ぬが、実はA国・B国の二重スパイだった。