【ネタバレ注意】『ジャングル大帝』の中の人間(序)

ツイッタでマンガや小説の中身にふれるとネタバレのそしりを受けかねないので、ブログでこそこそ書くことにした。

手塚治虫さんの作品を管理している(株)手塚プロダクションでは、過去作品の復刻や電子書籍の巻末に、「手塚作品の一部には人種差別的な表現があると指摘されるものがあるが、指摘には真摯に耳を傾けつつ、これこれの理由があるのでそれらを改変することなく発表するのである」旨の断り書きを添えている。先日、ツイッタのなんJ世界史部さんがそれを引用し、「人種差別に関する表現が色々言われている今日この頃だからこそ、『手塚治虫漫画全集』の巻末に書かれているメッセージが完璧すぎるので是非多くの人に読んでほしい」と紹介していらして、わたしゃ泣きそうになった。

私が幼少の頃から愛読している『ジャングル大帝』は、「土人」という言葉を用いてアフリカ原住民の人々を描いているために、「人種差別けしからん」とのクレームを受けてきた作品だ。「蛮族」とも書かれていたかな。しかし、作品をちゃんと読めば分かる。登場する人物は、白人も黒人も日本人も、みな等しく面白くて、時に愚かで愛らしく、時に叡智に満ちて人間味豊かに描かれている。

私が思い起こしたいのは、この人物たちのことだ。主人公の白いライオン・レオの友人である日本人ケンイチは心素直な正義漢、ケンイチのおじで警察官のヒゲオヤジは例のキャラ、一方の野生動物を密猟するハム・エッグは悪役らしく描かれている。…でもそれらの人物をステレオタイプで終わらせないのが、この物語の壮大さなんだな。